地方暮らしに憧れる人々に贈る、東京→北海道移住エッセイ OPEN THE DOOR 第7回 憧れの薪ストーブ生活(4)

炉内で焼く・炊く・蒸す

ここからは、炉の中を活用するメニューをいくつかご紹介。

(6)ピザ! 薪ストーブで焼いたピザはうまい!!
一応、ちょっとした注意点をご紹介。
灰をかぶりすぎると、なかなかエグいことになるので、炉内の灰をうまくコントロールすべし。
ストーブを焚く前にあらかじめ灰を減らしておくとよい。ピザを入れる際には、熾火になった薪を左右によけて、扉を開け閉めする時も、そーっと行い灰を巻き上げないこと。
炉が空気を吸い込む時に灰が巻き上がるので気を付ける。
多少の灰は笑ってごまかす。

生地からこねてフルに自分で作るのももちろんいいが、市販の冷凍ピザでもオーブントースターで焼くより薪ストーブで焼いた方が圧倒的にうまい。何度もやっているので自信を持って言える。
おまけに、これは薪ストーブ関係ない話になってしまうが、市販の冷凍ピザに自分で「追いチーズ」「好きな具材を勝手にトッピング」もよくやっている。チーズを大量に追加したりして、これがまたうまい。

(7)ダッチオーブンで鶏の丸焼き! こちらも説明不要であろう。写真が全てを物語っている。
一体何を説明すればいいのだろう。
ダッチオーブンに好きな具材を入れて、塩胡椒をして、薪ストーブに突っ込む。それだけで美味しい料理の出来上がりだ。
ただし、ここでも注意点が1つ。温度と時間の管理には慎重さが必要になる。特に温度が高すぎると、焦げる。本当に、油断するとめっちゃ焦げて泣く。
ただし、あまり時間が短いと中まで火が通らないし、低温で長時間だと焼くというより蒸した感じが強くこんがり要素にかけるものになる。ちょうどいい加減を見極めるべし。
ピザやパンと違って、ダッチオーブンは蓋をして使用するゆえに、目で確認しながら焼き加減を調節することが難しい。天板にのせる料理であれば時々蓋を開けて確認すればいいのだが。
経験や勘に頼る部分があることは否めないが、多少失敗しようが笑って楽しむくらいがちょうどいい。そういう料理なのだ。豪快でいいのである。
薪ストーブは焚きつけ後に250度程度まであげ、その後は薪の状態の変化に伴い徐々に温度が下がってゆくもの。炉内での料理は、焚きつけ後から数時間後、熾火となり薪の量が減ってきた170から200度あたりの温度帯やタイミングを狙って活用するのが良い。
であるがゆえに朝イチよりは、昼や夕方の料理に向いている。

(8)時には頑張って、パエリアも! パエリアのような炊き込み料理を、ストーブ+スキレットで美味しく作るのは難しい。だが、上手にできると本当に幸せである。
こればかりは「具材を並べて突っ込んでOK!」…のように単純にはいかない。難易度は高めだ。
写真の料理は、ワタリガニをメインにエビと野菜を炊き込んだパエリア。事前にワタリガニを一度煮て出汁を取っておく。次に、蓋ができるスキレットで米を炒め、その上に、ワタリガニ、下ごしらえをしたエビや野菜(焼き色をつけておくのも良い)を並べ、塩・スパイス・ハーブを適量加えて、酒(ワイン等)と出汁を注ぐ。
そして蓋をして、薪ストーブの炉内に突っ込む。
時間と温度は…、ウーム、水加減にもよるし、これも経験と勘が頼りだが、例えば鍋を火にかけて炊飯する時の「15から20分火にかけ→蒸らしを15から20分」というような一般的なタイム感を基準に、ストーブの温度と勘案して「これくらいいいかな?」「もうちょっとかな?」とドキドキしながら調理に挑む。

炊き上がったら飾りに何か葉っぱ的なものを添えて完成だ。
お友達が遊びに来るときや、誕生日、クリスマスで頑張って作る一品。

(9)アルミホイルで焼きイモ・焼き野菜 ここで再びお手軽な使い方に戻ろう。
サツマイモで「ザ・焼き芋」もお手の物だが、ジャガイモや他の野菜も写真のように熾火になった薪の横においておくだけで、一品料理の完成である。
時間は温度次第で、30分から1時間ほどだろうか。あまりに温度が高い時はすぐに焦げてしまうので、温度が下がってきた頃に。
焦げが気になる場合や、より蒸してホクホクさせたい場合は、濡らしたキッチンペーパーを巻いてからアルミホイルで包むと良い。
塩胡椒やバター、マヨネーズをつけて。

(10)「はんごう」で蒸し焼きに!
最後に、先ほどのアルミホイル焼きの応用で、「はんごう」を使ってみるアイデア。
ちょっとした野営気分。ワイルドなテイストが楽しい。
写真のように、洗った野菜をポンポンと入れて、ストーブの中に入れておくだけ。
兵式はんごうはタフである。この程度で歪んだりしない。
野菜の皮は剥かないほうがいい。野菜が持っている水分のみで蒸し焼きにするのだ。
実は、(今や有名になってしまった)メスティンでも同様のことができる。 調理するのは根菜類が最適。ミニカボチャもご覧の通り。
味は食べる時にお好みで。塩すら振らずにそのまま味わうのもよい。
ジャガイモ、玉ねぎなどは食べる時に皮を剥く。
炉の温度はピザやパンを焼く時よりは低め、130から180度くらい、そこから火が消沈するまで、1時間以上は入れっぱなしにしておく。なんなら入れたことを忘れてしまうくらいでも問題ない。
実際に「あ、そういえば」と、翌朝見つけることもある(さすがに忘れすぎか……)。
中までしっかりと熱が通って、素材本来の甘味が引出される。とてもうまい。

以上、普段やっている中から、10通りの料理を紹介させていただいた。
それぞれ、基本の料理法をおさえて、あとは道具とアイデアと応用、トライあるのみである。挑戦すればするほど上手くなるし、話のネタになる(笑)。失敗は成功へのステップ、成功は次なる挑戦への切符である。

薪の調達や運搬など、労働する部分を見れば大変な気がしてくるが、頼りがいのある暖かさに加えてこうした使える側面のほうがはるかに大きいので、大変さなど忘れてしまう。ちなみに停電にも強い。だって電気がなくても使えるのだから。
なんでもお任せできる無敵の「料理人」が一台、うちの中にいると思うと本当に心強い。

▲コロンビアのバックパック『ペッパーロック36L バックパック』16,940円(税込)



これを背負って散歩に出てみた。街でもハイキングでも、シンプルで使い勝手の良いバックパックということである。見た目も感触も、スタイリッシュでかっこいい。
実は、最初に手にとってみた時、「山で使うにはちょっと重いかなぁ」というのが第一印象だった。公式サイトによると重量は1,190g、一般的な山用デイバッグ(30から40L程度)の基準でみた場合ヘビー級であるのは事実である。しかし、この商品のコンセプトは山専用ではない。どちらかというと街が主戦場に思う。例えばメインコンパートメントにはPCスリーブ、他にもいくつもポケットがあり、小物を整理し使い勝手よく収納できる。 個人的に1番の推しポイントは背面のモールド成型バッドだ。これが重さの理由の1つだが、実際はこれのおかげで背負った時にとても快適である。荷重が背中全体に柔らかく分散され、「どうも“当たりどころ”が悪くて不快だなぁ……」なんてことが起きない。 登山で軽量化を頑張った経験がある人ならお分かりになると思う。バックパックは軽ければなんでも良いというものではなく、多少重くてもある程度の堅牢性がある方が安定感があってバランスを取りやすく、結果として疲れにくいということがある。街やちょっとした低山をモリモリと歩くのが好きな人や、ノートPCを入れての毎日の通勤、あるいは頻繁に出張に行く人。たまに登山でというよりは、毎日ガシガシ使う、そんなシーンにおすすめしたい。自分も日常のシーンで活用したい。例えば東京まで1泊2日、仕事道具を持って出版社で打ち合わせ、ついでに奥多摩を歩いて写真を撮ってこようかな、なんて時は、真っ先にこのバックパックを選ぼう。
ちなみに、ちょっと話がそれて申し訳ないが、このザックを背負って川のそばの雪原を歩いていたら、窪みのところにかわいい足跡と、こんな怪しい穴を見つけた。出入りした後にも見えるが、もしかして中に何か潜んでいるのかな……? 3月、北海道の冬は長く、雪解けまではもう少しかかるというところ。まだストーブが欠かせない日々だが、ぼちぼち来シーズンの薪の心配を始めている。春はもう近くである。

プロフィール

信濃川日出雄
漫画家。代表作は『山と食欲と私』。
2001年よりプロ漫画家デビュー。2015年から新潮社「くらげバンチ」にて連載をスタートした『山と食欲と私』が累計150万部を超え、現在も好評連載中。PR企画やグッズデザインなどにも積極的に参画、コロンビアとも多くコラボレーションしている。

Text, Photos:信濃川日出雄