Daily Life of Athletes, In the Case of Tasuku Matsuura. 自在に道具を乗り変えて1年を滑り尽くす <スノースケートディレクター 松浦将>

超人的なパフォーマンスを見せるアスリートたちは、フィールドを離れるといったいどのような日常を送っているのでしょうか。どのような街や家に暮らしているのでしょうか。彼らのバックグラウンドからアクティビティの魅力、日々のトレーニングや地元の行きつけまで、根掘り葉掘り伺ってきました。第2弾はスノースケートディレクターであり、雪板乗りの松浦将(まつうら たすく)さん。

スノーボード、スケートボード、サーフィン。“横ノリ”と呼ばれる遊びには、それぞれ独特な中毒性が存在します。長野県白馬・小谷村に生まれ育った松浦将(まつうら たすく)さんも、そんな横ノリの世界に魅せられた一人です。しかし、彼がスペシャルなのは、どの遊びも遜色なくハイレベルにこなすこと。季節や雪のコンディションに合わせて、多種多様な道具を持ち出し(時には自作して! )、一年中横乗りを満喫しているんです。多彩な滑り手であり、雪板のシェイパー、スノースケートブランドのオーナーでもある、松浦さんのデイリーライフにお邪魔します。

【Profile】
名前:松浦将 Tasuku Matsuura
年齢:43歳
出身地・居住地:長野県白馬・小谷村
職業:スノースケートディレクター / ピースメイカースノースケート代表
家族構成:妻と愛犬
愛車:キャラバンNV350(車中泊仕様)
年間滑走日数:100日以上。例年11月後半からGW明けくらいまで
趣味:燻製作り

スノースケートとの出会い

──まずは簡単に経歴を教えてください。
白馬・小谷村に生まれ育ったので、子どもの頃から当たり前のようにアルペンスキーをしていました。中高生になり、周りの影響でスケボーやスノーボードに出会ってからは、横ノリにどっぷり。プロのライダーをしていた10年くらい前に雪板とスノースケートに出会って、5年前に“ピースメイカースノースケート”を始めました。

──シーズン中は1日をどのように過ごしていますか。
ハイシーズンだったら、6時半くらいに起きて8時くらいには山に入って、昼飯も食わずに13時くらいまでずっと滑ってますね。ほぼ毎日滑っているので、丸一日滑ることは少ないかな。フィールドは白馬バレー全域。毎日どこかしらが良いので、外のエリアにはあんまり出かけません。

──オフシーズンは何をしているのでしょう。
スノースケートは雪が少しだけあればできてしまうので、結構シーズンが長いんですよ。5月後半くらいまでは、どこかしらでできます。完全に雪が溶けると、スケートとサーフィンを楽しんでいます。雪がある間は山ばかりで、海には入りません。雪の遊びは雪がある時にしかできませんから。逆に夏場もカムイミサカのハーフパイプはたまに行きます。
──松浦さんの削っている雪板とは、どのような道具なのでしょうか。
簡単に言うと、足が固定されていないスノーボードです。サーフィンやスケートのように足元が自由で、道具も片手で持てるくらいの木の板1枚と手軽。気になる斜面を見つけたら、さっと自分で登って滑るような軽快な遊びです。

──板はいろいろな形や長さがありますね。
形状によって、乗り味は様々です。足の幅より広くしすぎると踏みこめなくなるので、浮力は長さで出します。板にコンケーブとチャンネルと呼ばれる溝を掘ることでも浮力を出しているのですが、これも乗る人の体重で効き具合が変わる。ここはサーフボードにすごく似ています。 ──販売もしているのですか。
僕が削る雪板は売り物ではなく自分専用。スノースケートは万人向けに作っています。雪板は1枚の木材から削り出して作るのですが、1枚削るのに2ヶ月近くかかることもあります。時間とコストが割に合わないんですよ。あとは良い板が削れたら自分で乗ってみたくなって、売りたくなくなっちゃう。雪板を考案した友人の五明淳くんが販売している(芽育雪板)ので、欲しい方はコンタクトしてみてください。 ──雪板はゲレンデでも乗って良いのでしょうか?
ゲレンデによってOKなところもあります。でも、圧雪面ではなくてパウダーで乗るための道具なので、どんどんパウダーが食われていくゲレンデよりも、人が狙っていないちょっとした斜面をハイクアップして乗るのが楽しい道具だと思います。雪が降ったらすぐ出動できる環境に住んでいる人にとっては、1枚あると楽しい道具です。

「その時々のコンディションによって一番良い道具に乗る」

──雪板やスノースケートならではの魅力とは?
滑りを始めたばかりの頃のような気分が味わえること。雪板はスノーボードが上手な人でも、あられもない転け方をします。友達が頭からパウダーに刺さって爆笑したり、一人でやるより仲間とみんなでワイワイ滑るのが醍醐味です。スノースケートは、雪が良くない日でも雪遊びが満喫できる新しい選択肢になります。 ──スノーボード、スノースケート、雪板、スケートボード、サーフィン……。どのように乗り分けているのですか。
その時々のコンディションによって一番良い道具に乗る、っていう考え方です。例えば、シーズン頭はパウダーがすごく良いんで、雪板とスノーボードをやります。パウダーシーズンが終わる春になると、スノーボードとスノースケートに移行していき、サーフィンとスケートは雪解け後ですね。

──では、パウダーが最高な日は何に乗りますか?
僕は雪板を選びます。スノーボードは雪面が多少張ってても、風に叩かれていてもそれなりに楽しめますが、雪板は本当に最高のコンディションじゃないと楽しめない。そういう日にしか乗らないと決めているので、迷うような日はスノーボードですね。標高が高いバックカントリーも、雪面の条件が整いづらいのでスノーボードです。雪板、スノーボード、スノースケートの3つがあれば、毎日どれかしらができるので、シーズン中は働く暇がないくらい忙しい!

──シーズンやその日のコンディションで乗り分けるのですね。
もっと細かく、1日の中で乗り換えることもあります。例えば、スノーボードでゲレンデを滑りに行くと、朝から2時間も滑るとパウダーがボロボロになってくるじゃないですか。そしたら、雪板を持って昼前くらいから陽が当たり出す秘密の斜面に行く。で、まだ滑り足りなかったら午後はスノースケートをする。1日の中でも、その瞬間に合った道具で遊ぶことで、最大限に雪を満喫できます。

「楽しんでやっているやつには絶対に敵わない」

──松浦さんが滑りで表現したいスタイルとは。
やはり、その時々で良いものに乗るっていうスタイルを総合的に見せられようになりたい。雪板とスノーボード、スケートボードやサーフィンまで全部がリンクしてくるんで、全部上手く滑れるようになりたいなとずっと思っています。
──横乗り全般に共通する上達のコツってありますか。
技術的なことよりも、心の底から楽しんで取り組むことが大事だと思います。どんなに科学的で論理的なトレーニングを積んでも、楽しんでやっているやつには絶対に敵わない。頭の中が全部横ノリだけになってしまえば、絶対に上手くなります。
──グリーンシーズンの効果的な練習方法を教えてください。
僕は2種類のスケボーに乗っています。1つはパーク用、もう1つはクルージング用。パークで乗るスケートはスノースケートに直結する技術です。雪面でこういうことをやりたいと想像しながら滑ります。対して、クルーザーはスノーボードや雪板のイメージトレーニングですね。雪や波がなくても、やる気さえあればどこでも練習できるので、まずはスケートから入ると上達が早いと思います。

──体のケアには気を使っていますか。
遊びに行く以外に特別なトレーニングはしていません。強いていうなら、足首や腰をケガしてからは、体重が増え過ぎないように注意しています。体重が増えると負担がダイレクトにきてしまうので。 ──松浦さんの道具選びの基準を教えてください。
大事にしているのは“サイズ”です。サイズが合っていない道具は、いくら機能的でも性能が発揮し切れない。ウェアはダボッとさせ過ぎないサイジングが好みです。マウンテンハードウェアは元々もっとテクニカルで「滑りで着るには細過ぎ! 」って思うものが多かったのですが、最近はほど良い太さがあって、動きやすいですね。

──お気に入りのモデルはありますか。
スケボーするときには、『ローンマウンテンクライムパンツ』や『ローンマウンテンストレッチパンツ』、あたりがめちゃくちゃ調子いい。伸縮性のある生地が立体裁断になっていて、濡れてもすぐ乾く。俺はもう、普通のチノパンとかジーンズとか一生履くことはないです!

▲『ローンマウンテンクライムパンツ』15,400円(税込/販売終了した商品です)