「自然の視点から世界を見れば、きっといい方向に進む」“KEEP EARTH AWESOME”高尾山で地球を想うイベントを開催

マウンテンハードウェアが地球環境を考慮した製品づくりや保全活動、環境問題を考えるイベントを開催。「KEEP EARTH AWESOME(地球を素晴らしいままに)」をテーマに、東京・高尾山で多くの登山者や観光客に呼びかけた。アスリートやカメラマンなどが参加し、サステナブルTシャツの販売やゴミ拾いなど多彩な企画を展開した今回のイベントの模様をレポート。

自然を考える多彩な企画を展開

地球を思い美しい自然に感謝する日「アースデイ」(4月22日)に合わせ、マウンテンハードウェアは4月16日(土)、東京・高尾山周辺で環境問題について考えるイベントを開催した。
「KEEP EARTH AWESOME(地球を素晴らしいままに)」がイベントのテーマ。京王線・高尾山口駅前にブースを設け、アースデイや自然環境への関心や機運を高めようと、登山者や観光客に声を掛けた。山岳環境保全に充てる寄付も募り、協力者にはサステナブル素材を使ったガベッジバッグを配布した。
さらに駅近くのゲストハウス『Mt.TAKAO BASE CAMP(高尾ベース)』では、世界を旅する写真家・竹沢うるまさんの写真展を開催。目まぐるしく変化するアイスランドの自然を切り取り、「境界とは何か」を問う作品が並んだ。

イベントには、マウンテンハードウェアの社員やサポートアスリート、高尾ベーススタッフら15人が参加した。アースデイに合わせて製作・発売した、竹沢さんの作品がプリントされたリサイクルポリエステル100%のTシャツを着用し、啓発・募金活動のほか、高尾山周辺でゴミ拾いを行なった。

アウトドアフィールドで活躍するカメラマンやアスリートが参加

▲「自然を考えるきっかけがつくれたらうれしい」と語る竹沢うるまさん(写真家)

これまでにおよそ150カ国を訪れ撮影してきた竹沢うるまさん。大学1年生の時に旅した沖縄で海の美しさに感動した経験から、「未知の世界に出会った時の心の振幅」に喜びを覚え、写真で記録するようになったという。

その後、ダイビング雑誌のフォトグラファーを経て、20代後半で独立。「大地」を主なテーマとし、世界各国の自然や人々の営みを撮り続けている。
今回のイベントでは、「世界中で見てきた景色を伝えることで、自然について考えるきっかけをつくれたらうれしいです」と自らの作品を多数展示した。

▲「環境に対して僕らができることはある」と語るのは、中川政寿さん(トレイルランナー)



トレイルランナーとして京都府、和歌山県の2拠点で活動している中川政寿さん。トレランツアーの主催と共に、“自分たちの遊ぶフィールドは、自分たちができる限りの範囲で整える”をコンセプトにトレイル整備や環境保全にも精力的だ。
2015年には、トレイルランナーによるグループであるNPO法人「Kyoto Woods(京都ウッズ)」を立ち上げ、活動フィールドでもある約60kmの京都一周トレイルの整備に貢献している。また、居を構える和歌山県龍神村では地元住民と協力しながら観光資源としての幻の熊野古道奥辺路再生に携わる。
イベントでは登山道のルールや課題、整備活動について伝える資料を展示。「環境に対して僕らができることはあると思って活動を始めました。そんな意識が広まっていったらいいいと思います」との思いの下、訪れた登山者らと語り合った。

▲「自然があるから僕らは遊ぶことができる」と語る水間大輔さん(プロスノーボーダー・登山ガイド)



地元である富山県の立山を主なフィールドに活動する水間大輔さん。スノーボーダー、登山ガイドとして年間を通じて山の自然に触れ、また、その魅力を人々に伝えている。

「当たり前のことですが、自然があるから僕たちは遊べているんです」と話す水間さん。18歳からスノーボードを本格的に始め、27歳でハーフパイプ競技でのプロ資格取得。現在、冬季はバックカントリーで活動し、グリーンシーズンには登山者をガイドする。

山で活動していると、登山者らのマナー違反に直面する場面があるという。その上で、今回のイベントの意義を水間さんは説明する。
「山のトイレやゴミの放置といった問題はまだまだあります。普段から山の環境問題については自分なりに啓発などの活動をしていますが、みんなでイベントとして行動することで広がっていくと思います。いいアプローチだと思い、二つ返事で参加しました」

旅する写真家がアースデイの展示に込めた想い

イベントのメインコンテンツとして開催された「KEEP EARTH AWESOME 境界のない写真展」では、竹沢さんがアイスランドの壮大な自然風景を撮影した最新写真集『Boundary | 境界』(青幻舎)より厳選した作品を公開。竹沢さんは作品についてこう語っている。
「いろんな国を訪れると、いいところも多く見るんですけど、悪いところもたくさん目の当たりにするんですよね。例えば、宗教や人種、国の『境界』による対立。でも、その境界というのは人間が勝手を引いたものでしかなく、自然という立ち位置から見ればほとんど無意味なんです。自然に比べれば、人間の歴史なんてたかだか知れています。人間も自然の一部なのだから、もう一度、自然という視点から世界を見てみることで、少しはいい方向に進むのではないかと思います」



「作品では、そういう境界のあいまいさを自然風景の中で表現したいと思いました。アイスランドには、原始の自然風景が広がっています。火山岩の黒いビーチに白い波が寄せては返す様子は、『境界線がありそうで、ない』ことを物語っています。また、黒い大地は雪が降れば真っ白な大地に変わります。黒が白になったり、白が黒になったりと目まぐるしく変化する。白と黒が対立構図に見えて、実はそうではない。自分が今感じている境界というのは、意味をなさないというわけなんです」
また、高尾山口駅前に設けたテント内には、竹沢さんが2010から2012年にかけてインドやペルー、キューバなど103カ国を巡った際に撮った現地の人々のポートレートなど写真約50枚が並んだ。

「長い間の旅の経験から、自然と密接に関わりながら生きている人々の表情はすごく輝いています。文明から遠くなって僻地に行けば行くほど、人々はいい顔をしていると感じます。この人たちの目線の先には豊かな自然があるんだと、感じてもらえればなと思います」

「自然に近いところで撮影をし続けているので、深刻な気候変動や環境問題は前々から肌身で感じてきました。僕が自然のためにできるのは、人々に『こうしなさい』と言うのではなく、自然や人々の暮らしの写真で『こういう世界があるんだよ』と伝えることです。自然を考えるきっかけづくりですね」

「自分たちができることを」と行動する

イベントでは、スタッフが2班に分かれ、高尾山の登山道や麓の高尾町周辺で清掃活動を行なった。一見きれいに見える、トレイルや街路にはタバコの吸い殻や菓子の袋など小さなゴミが散見された。また、道を外れた河川沿いや森の中にはペットボトルや缶、傘、発泡スチロールなどが捨てられていた。最終的には、複数の大きなゴミ袋がいっぱいになるほどのゴミが見つかった。
高尾山口駅前の特設ブースは、高尾山を訪れた登山者やトレイルランナーでにぎわっていた。竹沢さんが世界各国で撮影した作品は、ヒマラヤのベースキャンプでも使われる大型テント内に展示され、子どもたちも興味深そうに一枚一枚を見ていた。 ブースでは、登山雑誌『山と溪谷』を発刊する山と溪谷社が事務局を務める日本山岳遺産基金への募金活動も展開。募金に協力した人には、工場で残ったレインウェアの生地を活用したマウンテンハードウェアのオリジナルガベッジバッグをプレゼントした。