新たな価値観を吹き込んだ斬新なリアルデニム『ロマビスタデニムパンツ』-コロンビアとデニムスペシャリストによる開発インサイドストーリー-

国内外で大手ジーンズメーカーのヒット商品を手掛けるドクターデニムホンザワ代表 本澤裕治氏と、コロンビアとのコラボアイテム『ロマビスタデニムパンツ』が7月20日(火)、Makuakeにて発表!アウトドアウェアの非常識とデニムの常識のクロスオーバーから生まれた、コロンビア渾身の新コラボアイテム開発秘話に迫ります。

アウトドアウェアの非常識とデニムの常識をクロスオーバーさせ、新たな価値観の提示に挑んだコロンビアの『ロマビスタデニムパンツ』。販売方式まで過去にない方法を試みる『ロマビスタデニムパンツ』の発表直前に、製品開発を手がけた本澤裕治氏のインタビューを通して、コロンビア渾身の新製品開発秘話をお届けします。

▲数千着のデニムを収蔵するDr.Denim Honzawaショールームにてインタビュー。

プロジェクト名に込められたデニムへの思い

期間限定プロジェクトの製品だけに、ともすれば噂を聞きつけるのが完売後になり、大いに悔しがるコロンビアファンとデニムマニアが巷に溢れるかもしれない──。それが事実となるかは時間の経過を待たなければなりませんが、しかし、この記事を見ていただいている方にだけお伝えします。コロンビアの人気アウタージャケットの“ロマビスタジャケット”から名称を引用した今回の『ロマビスタデニムパンツ』。これは、その新しさを見過ごすなど許されないプロダクトになるかもしれません。

▲『ロマビスタデニムパンツ』※21年7月20日(火)よりMakuakeにて販売開始。
詳細はページ下部のINFOを参照。

ここに至る布石はありました。2017年にスタートした、「コロンビアブループロジェクト」。“アウトドアウェア×ジーンズの新たな可能性”を模索するこの企画で、5年に渡りコラボを続けているのが本澤裕治氏です。本澤氏は、『EDWIN(エドウィン)』に10年、『LEVI'S(リーバイス)』に6年間在籍した後にDr.Denim Honzawaを設立し、2009 年にオリジナルブランドの『RED CARD(R)』をリリース。アメリカン・カルチャーへの興味を起点にジーンズを研究し、世界中のデニム生産地を訪ねながら、デニム製品のプロデュースを手掛けているジーンズのスペシャリストです。ゆえにプロジェクト名に掲げられた“ブルー”とは、デニムの伝統的な色合いを指しているのですが……。

「これまでコロンビアとコラボしたものの多くはパッチワークを表現したプリントや、色落ちを抑える反応染めによる、いわば“デニム風の製品”でした。もちろんそれらは、新しいことに貪欲にチャレンジするコロンビアでなければ実現できない画期的なものです。ただ僕としては、いつかは“本物のデニム”で勝負したかった。それに、今や日本のジーンズは世界でも知られる存在ですから、日本文化の発信としても価値があると思っています」

▲パッチワークを表現したプリントや、色落ちを抑える反応染めによる過去のコラボ製品。

少し本筋から離れてしまいますが、裏を返せば過去の「コロンビアブループロジェクト」では、本澤氏の念願が叶わなかったことになるのではないでしょうか。にもかかわらず、コロンビアとコラボを続けた理由をたずねました。

「僕にとってコロンビアは、アメリカらしさを象徴するブランドの一つなんです。スキーが流行した学生時代、スキーブランドのウェアを着るのがどうにも嫌で、あれこれ探してたどり着いたのがコロンビアでした。色使いが素晴らしかったんです。紫・緑・青の組み合わせがいかにもアメリカっぽくて、しかもアウトドアウェアでスキーを楽しむのが自分的に相当イケてたんですね。その当時のウェアは今でも取ってあります」

▲本澤氏が学生時代に着用していたコロンビアのウェア。

常識と非常識のクロスオーバーが生み出す価値

本澤氏の中で育まれてきたコロンビア愛とデニム愛。そのマリアージュが容易に進まなかったのは、文脈に添えば家系の違い。実質的にはアウトドアウェアとジーンズの特質の違いがありました。

リアルデニムとは、「インディゴで染めた色落ちする生地」というのが本澤氏の見解。「だから僕らは、経年変化によって表情が変化する、たとえ破けても捨てられない服をつくるのが使命です。長く着られることが今となってはサスティナブルと呼ばれるようになりましたが、ジーンズは元からそういう特長をもっていたわけです」

▲『ロマビスタデニムパンツ』も洗いを重ねるごとに表情が変化する。



本澤氏曰く、それがデニムの常識。一方でコロンビアにとっては非常識の要素でした。なぜならコロンビアが提供するアウトドアウェアには、色落ちが許されないという伝統的な使命があり、また破損した場合には機能を低下させてしまう宿命を背負っているからです。

しかし、コロンビアも常に原点に立ち返り、来るべき世界を考えています。では、アウトドアウェアの原点とは何か? まずはどんな状況に晒されても丈夫であること。それは作業着を出自とするジーンズにも共通するコンセプトであり、なおかつデニム素材の色落ちしても長く使える特質との融合によって、アウトドアウェアのさらなる可能性を提示できるのではないだろうか──。そんな仮説を後押しするように、本澤氏はこんな史実を語りました。

「かつてコロンビアにもキャンバス生地を用いた製品がありましたよね。それからリーバイスも、スポーツの世界大会でアメリカチームのウェアをつくった実績があります。アメリカの企業には、常識と非常識の境界線を一気に超えて新しい価値観を生み出すクロスオーバーの伝統があるんですよ」

アウトドアウェアとジーンズの可能性を広げたプロダクト

いよいよ歩み寄るアウトドアウェアとデニムの両家。かつてない縁組の実現には、かつて誰も利用していなかった仲介が存在しました。それが“BORO”。2,000 基のハイテク自動織機で年間3億m(メートル)のデニム生地生産能力を誇るトルコのISKO(イスコ)社が用意した、生地サンプルの一つです。見つけたのは、イスコ社と取り引きがある本澤氏でした。

「東洋と西洋の文化が交わるトルコの人々は、こっちがびっくりするほど日本文化が大好きなんですよ」
BOROとは、ぼろ切れやボロ布のそれを指しています。サンプル生地には、使い古した布でも大事に使う考え方や、布の継ぎ合わせで現れる独特の風合いに向けた敬意と興味が込められていたそうです。 「日本文化の発信やサスティナブルといった今回のテーマにぴったりでした。イスコでなければ実現不可能な特殊な織り方ですが、特殊すぎて誰も使い道がわからなかったんでしょうね。それが製品になったら、しかもコロンビア発と知ったら世界中が驚きますよ。そんな企画を通すのもまたコロンビアのいいところだと思います。リーバイスもそうでしたが、ローカルの発信を大事にする。アメリカンブランドならではの大らかさでしょうね」 こうして誕生した、新世代のBOROを表現するリアルデニムの『ロマビスタデニムパンツ』。この斬新な製品は、応援購入サービスのMakuakeで発表されます。既存のコロンビアのオンラインストアではなく、Makuakeを利用するのも今回初ですが、コロンビアファンに留まらず新しいモノ好きにも注目してもらうのが狙いのようです。いずれにしても、サスティナブルを意識したデニムの採用を始め、かつてないアイデアや思いが盛り込まれた特別な一品であることは間違いありません。最後に、『ロマビスタデニムパンツ』の発売に向けた本澤氏のメッセージを記します。

「これほど自分が欲しいと思えた製品は久しぶりですね。それを日本でしか売らないというんだから、これもすごいことです。できればニューヨークやロンドンのコロンビアショップに並ぶ姿を見たいですね。あるいは色落ちしたユーズドが出回るかもしれない。誰も放っておけないですよ。アウトドアウェアとジーンズの可能性を広げたプロダクトですから。是非、Makuakeでチェックしてください。」 ※ソーシャルディスタンスを保ち、安全に十分に配慮した上で取材を行っています。

INFORMATION

『ロマビスタデニムパンツ』 は21年7月20日(火)、Makuakeにて発表

プロフィール

本澤 裕治
1989年にジーンズメーカー国内大手のエドウィンに入社、10年在籍し、モデル503の企画に参加。リーバイスに6年在籍し、リーバイス501のモデルチェンジを担当。2005年にDr.Denim Honzawaを設立。2009年秋冬より、自身のオリジナルブランドである『RED CARD(R)』をスタートする。ジーンズマニアで研究熱心なことでも知られており、世界のデニム生産地を自らの足で訪れ各国の情報(FIT、縫製、加工、生地)を収集。数々の有名ブランド、SPA企業とデニム製品のコンサルティングやプロデュースを手がける。

Text:田村 十七男
Photos:大石 隼土