ブームがますます盛り上がり、進化し続けるサウナ。さらに近年その中でも注目を集めているのが、自然の中で“ととのう”体験ができる「テントサウナ」です。今回は初心者の方にもわかるように、テントサウナの火付け役である『Sauna Camp.』の大西さんが、その魅力とやり方をレクチャー!
今や老若男女問わず、幅広い層から愛される娯楽となったサウナ。その勢いはとどまることを知らず、サウナーの人口は年々増え続けています。加えてブームが盛り上がれば盛り上がるほど新たな楽しみ方も生まれてくるもので、近年この業界で熱いと言われているのが、アウトドアで楽しめる「テントサウナ」! 大自然のキャンプスタイルで楽しめるテントサウナは、その圧倒的な開放感とさまざまなアクティビティとのミクスチャーが人気を呼び、愛好家が急増中です。そこで今回は、さまざまな活動を通してテントサウナのブームをけん引している『Sauna Camp.』の大西洋さんに、その魅力とやり方を教えてもらいました。
▲『Sauna Camp.』メンバー・大西 洋さん。サウナにまつわる記事の執筆や、イベントの企画などを手掛け、24時間サウナのことばかり考えているサウナマニア。
新たなムーブメント到来!いま話題沸騰中のテントサウナとは?
まずは、今回レクチャー役を務めてくれる『Sauna Camp.』の大西さんが最初にテントサウナと出会ったきっかけや、いつ頃からブームの兆しがあったのか、などのお話からスタート! 加えて、初心者がテントサウナを始めるときにおすすめの手順や、手に入れておいた方がいいギア&ウェアなども紹介してもらいました。
──最初はまず遡って、大西さんとテントサウナとの出会いを教えてください。
まず僕はキャンプ歴が15年ぐらいなのですが、サウナにハマりはじめたのが7・8年ぐらい前です。そのときに『サ道』という今ではサウナのバイブル的な漫画を読んで、近所のサウナに通い始めたらものすごい気持ち良くて。しばらく通っていたら次第に「アウトドアでサウナから湖や川に飛び込みたい!」というシンプルな欲求が湧いてきたのですが、当時の日本ではそれができる場所はありませんでした。「これは海外に行かないと体験できないのかな」と考えたときに、たまたまネットで調べていたら、テントサウナっていうものがあることを発見。日本ではほとんど流通していなくて個人で持っている人が少しいるぐらいでしたが、「これを買ってみたら海外に行くよりは安いし!」と思って買い、本栖湖に持っていってキャンプ仲間3人ぐらいでテントサウナをやってみたら劇的に気持ち良くて。これは絶対流行るなと思って、そこからいろいろ発信するようになりました。
──“テントサウナ”というワードがメディアなどで出始めたのも同時期ですか?
僕が最初に買ったのが2016年の8月で、そのときにInstagramのハッシュタグでテントサウナを調べたらヒットするのは20件くらいでしたが、今では5万弱ぐらい。ここ3年ほどで急激に認知度が上がりましたね。当初はテントサウナで遊んでいる人もいなくて、ルールも何もないような状態だったので、まずは怒られない状況だけを気を付けていました。火の使用やテントの設営、あとは遊泳が可能かどうか。この3つの条件を満たしていたらひとまず怒られる理由はなさそうだなという感じで、それをベースに場所を探して、ちょっとずつ許可をもらっての積み重ねで今に至っています。最初の頃は、知らない人からしたら何をやっているのかわからないところからのスタートでしたが、メディアで紹介されてテントサウナを楽しむ人が増えてくると認知されていきましたね。
──テントサウナの初心者が最初に始めるときは、どういう手順を踏んだらいいでしょうか?
まず体験をということであれば、テントサウナをレンタルしているキャンプ場や、常設しているホテルや旅館に行くのが手軽かと思います。あとはテントサウナ関連のイベントに行って体験するのが最初のハードルは低いですね。Sauna Camp.が代理店をしている『
MORZH(モルジュ)』というブランドのテントサウナだと、僕らが作った
フィールドガイドにリンクを張っているので、問い合わせがあったらそこから紹介しています。あとは
『サウナイキタイ』さんのデータベースにも情報があるので参考にしてみてください。
──そこから「自分でテントサウナやりたい!」と思ったときにゲットすべきギアを知りたいです。
テント、ストーブ、サウナストーンがまず最低限のセット。あとは細かく言うと、ペグとハンマーも買ってください。河原や湖畔は地面がけっこう硬くて、アルミペグやプラペグだとまったく歯が立たないので、僕らは安全に固定できてテントの設営が楽な、鋳造30cm以上のペグを推奨しています。それとテントの中で座るベンチ、ロウリュ用のバケツとひしゃく。安全面で言うと一酸化炭素チェッカーも買っておくといいかと。それとストーブ関連で言うと耐熱グローブ、火ばさみ、スコップ、灰バケツなどもあるといいですね。
──ギア以外で、テントサウナのときに身に付けるウェアのおすすめも教えてください。
まずはサウナハット。サウナでは熱が上に昇って頭が熱くなってくるので、断熱効果のあるハットを被って入るのが一般的です。あと水着やかかとが固定できるサンダル。さらに水から上がったときに冷えないように着るポンチョもあるといいですね。
大自然で“ととのう”ことができるテントサウナの魅力と楽しみ方
ここからは、大西さんが実際にいつもテントサウナを楽しんでいるときの流れをレクチャー! 聞いているだけでその気持ち良さが伝わってくるような、これまでに体験したテントサウナで印象的だったエピソードやその醍醐味もご紹介。そして『Sauna Camp.』として取り組んでいるイベントや活動についても聞きました。
──テントサウナ初心者がイメージできるように、Sauna Camp.の皆さんが実際にどういう流れでいつもテントサウナを楽しんでいるのかを教えてもらえますか?
泊まりか日帰りかで違いますが、例えば日帰りだとお昼前にフィールドへ着いて、そこからテントの設営。僕らは慣れているので30分ぐらいで設営、そこから火入れしても最短1時間ぐらいで準備を完了します。馴れない人だと1時間半から2時間ぐらいは準備の時間に見ておくと安心ですね。夜になっちゃうと水に入るのが危ないので、日暮れまでのんびり3時間ほどテントサウナを楽しんで、日帰りだとそれぐらいで撤収して帰宅。泊まりだったらそこから夕食を作ったり、焚き火をしながらご飯を食べたり。最後は寝る前にも入るのですが、そのときは川とかには入らずに、バケツに用意しておいた水を被って終わり。寝る前にそれをするとお風呂に入ったぐらいスッキリしますよ。
──聞いているだけで気持ち良さそうですね!
寒い時期はすぐに服を着て、速攻で寝袋に入ったらめちゃめちゃぽかぽかで寝られます。それで次の日にまた朝サウナに入って、誰かがご飯を作ってくれている間に火入れして、ご飯を食べたらまたサウナに入って撤収。僕らは帰りにもどこかのスーパー銭湯とかに寄って“追いサウナ”しますね。ただテントサウナって初心者からすると設営も撤収もけっこうハードなので、ほかの遊びをたくさん詰め込むというよりは、テントサウナにちょっとプラスしてキャンプぐらいの感じで楽しむのがいいかと思います。
──これまでにしたテントサウナで特に印象的なエピソードがあれば教えてください。
富士山の目の前の本栖湖でテントサウナをやったときは、冬場の湖畔が静かで、なおかつ目の前に見えたのが“逆さ富士”。サウナに入って夜に焚き火をしながら、寝る前に逆さ富士を見ながらぼーっとしていたら、「自分がどこから来て、いま何をしているのか」がわからなくなるぐらい完全な“無”の状態になりました。自分からあらゆる情報が抜けてリセットされるような感覚で、自然の中でのサウナじゃないとそうそうたどり着けない“ととのう”を体験できました。そのときの気持ち良さは忘れられないですね。
──テントサウナは体験しないとわからない良さがありそうですね。
映像や写真では伝わりにくい体験ベースの感動なのでやってみないとわからないし、一度やってみたらその感動を伝えたいという人が多い。それこそキャンプにまったく興味がなかったサウナ好きの人が体験してみたいということで、テントサウナをきっかけに初めてアウトドアに触れるケースも多いです。
──Sauna Camp.の活動としては、2021年はドラマ「サ道」のテントサウナ回や、オッドタクシー(2021年に放映されたテレビアニメ)とのコラボ、オリジナルのウェアの制作など、さまざまなプロジェクトが進んだ年だったのではないでしょうか?
そうですね! 本当にブームのおかげというのもありますが、いろいろなところからお誘いを受けて、またお誘いした場合もいい返事をもらえてすごくありがたかったです。ひとつひとつのイベントの反響も良かったですし、ウォーターアクティビティとの掛け合わせはこれからもやりたい。“ラフティング×サウナ”や“SUP×サウナ”など、いろいろなアクティビティとクロスオーバーした取り組みをどんどんやっていきたいなと考えています。
──加えてSauna Camp.は、テントサウナの安全面での啓蒙活動にも取り組んでいますね。
そういう立場になってきているので、安全対策とマナー&モラルを両軸で啓蒙しています。テントサウナがあとから出てきて、自分たちがこうやりたいと言っても、すでにそこにはいろいろな人たちがいますので。うまく共存していかないと文化として定着していかないですし、そういった呼びかけはこれからもやっていかないといけない。先ほども言ったようにアウトドアをまったく知らない人が挑戦することも少なくないですし、テントの中で火を使うというのは、アウトドアで考えたらけっこう上級者の嗜みなので。ガイドラインはもうちょっとわかりやすいものを作りたいので、今後は漫画とか短いムービーとかを作ってどんどん発信していきたいなと思っています。