カメラで山はもっと楽しくなる!登山好きに聞いたカメラの選び方と撮影術 - Vol.2 -

登山とカメラの魅力に迫る人気企画の第2弾。今回は登山愛好家である映像クリエイター・JINさんに、登山に適したカメラ機材の選び方や撮影時のコツなどについてお聞きしました。

梅雨が明けて、今年も緑萌える美しい夏山のシーズン到来!旬の花を眺めながらのハイキングや爽快な高山への登山など、燦々と降り注ぐ太陽の季節ならではの風景が広がります。 今回は、目の前の感動的な景色を素敵に切り取る撮影のコツや機材選びをご紹介。お話を伺うのは、登山系YouTuberとして活躍している映像クリエイターのJINさん。ご自身の経験と写真作例をもとに、感動やスケール感がそのまま伝わる写真の撮り方や登山に適した機材の選び方など “山がさらに楽しくなるカメラの魅力”について教えていただきました。 第一弾記事はこちら

▲JINさん

山の奥深さを知り、写真に収める面白さに夢中になる

幼少の頃からご両親と山歩きに親しんでいたというJINさんが本格的に登山を始めたのは、社会人になってからのこと。登山仲間でもある幼馴染と「いつかジャンダルム(飛騨山脈穂高連峰・奥穂高岳にある岩稜)へ行こう」と目標を掲げ、まず初めにトライしたのは富士山だったそう。以来、槍ヶ岳、劔岳(つるぎだけ)、戸隠山(とがくしやま)、北アルプスと国内の名峰を巡り続けてきました。山に魅了され、その奥深さを知るほどに、一期一会の瞬間を写真に収めることの面白さにも夢中になっていったといいます。 「写真の良さは、ちょっと時間が経って改めて見たときに、そのときの感動や仲間との会話を鮮明に思い出せること。登山を始めた最初の頃はコンパクトデジタルカメラを使っていたのですが、そのうち『もっとキレイに撮れるんじゃないか』と一眼レフに興味が出て、そこからはずっとデジタル一眼レフを使っています」 現在JINさんは、いち登山家として、また会員制捜索ヘリサービス『ココヘリ』のアンバサダーとして、山の美しさや険しさをリアルな視点で発信。「SNSでの投稿に『写真を見て登山を始めました』という方や、『同じ山に行ってきました』というコメントをいただいたこともあります」と語るように、心震える風景との出会いを収めた写真や映像は、SNSを通じて人々の好奇心を刺激しています。 今回はご自身が特に気に入っているという写真について、登山時のエピソードやスケール感の伝わる構図づくりなどの撮影ポイントを教えていただきました。 山梨百名山にも数えられる雪頭ヶ岳(せっとうがたけ)からの眺め。富士山の真上にかかるのは、夏の風物詩・天の川。市街地の夜景と美しい星々が収められたドラマチックな一枚です。 「富士山の上に天の川が流れる瞬間を狙って夜11時頃からナイトハイクして撮影しました。日中であればスマホのカメラでも十分キレイに撮れると思うのですが、暗くなりかけの風景や星空は一眼レフでしか捉えられない感動的な美しさがあると感じています」
こちらも雪頭ヶ岳のお気に入りスポットから捉えた、まるで冒険の始まりを描いたようなダイナミックな眺め。奥行きと広がりを感じられる構図を意識したそう。 「街と池の奥に富士山がドンと見えるこの場所からの眺めが気に入っています。風景撮影では広角レンズ(広範囲を撮影出来るレンズ)を使うことも多いですが、あえて少しアップ目にするとスケール感が伝わる写真になるといろいろと撮影するうちに気づきました」
タテ位置構図で山の標高や壮大な景観をよりダイレクトに写し取った一枚。月や人の写し込みがスケール感を直接的に伝える要素として生かされています。 「紅葉のシーズンに北アルプスの双六岳(すごろくだけ)から槍ヶ岳の方面を撮影。夕陽が沈んですぐの時間帯だったので、草紅葉のような景色に出会えました。月の位置と中央に小さく写っている人との対比で、山の大きさがより伝わる写真になったかなと思います」 美しい紅葉で知られる東北の名峰・栗駒山で撮影した景色。高性能カメラだからこそ捉えられる、目では認識しきれないほどの絶妙な色のグラデーションが表現されています。 「こんなに山が真っ赤になるのかと、これまで見た紅葉のなかでも特に感動しました。よく見ると中央のあたりに人がいるのですが、ここでも人を入れることでスケール感を表しつつ、少し斜めの構図で切り取ることで奥行きとなだらかさを表現しました」
二泊三日で訪れた雨続きの北穂高岳で、景色がひらけた瞬間を。刻一刻と変化する山の景色に、理想の画を撮るため辛抱強く待つことも。 「二日間、雨で本当になにも見えない状況が続き『今回はもうダメかな』と諦めかけていたのですが、夕方になって急にガスが晴れたタイミングで撮影しました。雲の動きも穂高に沿うように出ていて、この景色を撮影できたことは特に印象深い出来事です」 長野県の戸隠山(とがくしやま)で撮影された幻想的な眺め。偶然訪れた奇跡的な風景との出会いに無我夢中でカメラを構えたという撮影時の心境までも伝わってくるような美しい一枚。 「ここで撮影する予定はなかったのですが、立ち寄ったタイミングで風がやんで、いい具合に夕日が差していて、『これは現実なのかな?』と思うほどの景色にとにかく夢中でシャッターを切りました。すごくいい場面に出会えた瞬間で、思い出に残っている一枚です」 瀬戸内海を望む香川県の紫雲出山(しうでやま)でのひとコマ。うららかな季節、仲間との時間。見返すたびに思い出話に花が咲く、写真の醍醐味がぎゅっと詰まった一枚。 「他の写真にも言えることですが、画面の左右にポイントとなる被写体をつくることで、手前と奥といった立体感や左から右といった流れが生まれるように撮ることが多いです。ここでは人にポイントを置いて、桜の枝の広がりを効果的に見せられるように撮影しました」

カメラ初心者におすすめの機材とアイテム

普段の撮影には、カメラとレンズを数本、必要に応じて三脚を持参しているそう。さまざまなシチュエーションでの撮影経験をふまえて、カメラ初心者にオススメの機材とアイテム選びのヒントを伺いました。 「山の天気は変わりやすいので、カメラはちょっとくらいの雨であればそのまま使える防塵防滴(カメラやレンズの内部にホコリや水滴が入るのを防ぐ)のものを選ぶようにしています。バッテリーも出来るだけ持ちのいいものがいいですね。あと、広角レンズを使えば、目で見た広大な景色をそのまま写真に残す事ができ、望遠レンズを使えばその時印象的に感じた景色をより強調して写真に残す事ができるなど、同じ風景でもレンズを使い分けることで、色々な撮り方ができます。F値が低いレンズが一本あれば、樹林帯のように暗い場所でもブレずに手持ち撮影できますし星空もしっかり撮れるので、より楽しめるのかなと思います(※F値(絞り値):レンズから入る光の量を示す値。数値が小さいほど光を取り込む量が多くなり、暗い場所でも明るく撮れる)。とはいえ、カメラやレンズってなかなか手が出しづらいものでもあるので、年式が少し古いものや手に入りやすい価格帯のものから初めてみるのもいいと思います」 子どもの頃にご両親と出かけた山歩きを、現在では自身のお子さんと楽しんでいるJINさん。写真は、親子のかけがえのない時間や一緒に見つめた景色、そこで生まれた感動をいつまでも鮮明に記憶してくれます。 「YouTubeで活動していることもあって普段は映像を撮ることも多いのですが、映像には作り上げていく工程や山の魅力を忠実に伝える魅力がありますし、一方で写真には感動した瞬間にパッとシャッターを切る楽しさがあると思います。最近は子どもと一緒に山へ行くことも増えてきて、将来写真を見たときに『こういうところに行ったんだ』っていう思い出を残せたらいいなと思いながら撮っています。僕の親も写真や動画を残してくれていて、改めてそれを見ると嬉しくなりますし、この子にも同じような喜びを感じてもらえると嬉しいですね」
セイバー ファイブ ミッド アウトドライ
 カラー:(Elk, Red Quartz) サイズ:(22.5)
セイバー ファイブ ミッド アウトドライ
 カラー:(Black, Bold Orange) サイズ:(25)