漫画家・鈴木ともこさんに聞く、初めての泊まり登山におすすめの山小屋特集

今年こそは山で泊まりたい人へおすすめ!食事や空間づくりなど独自のサービスを展開する山小屋での体験。今回は、人気コミックエッセイ『山登りはじめました』の著者・漫画家の鈴木ともこさんが、初めての山中泊でもトライしやすい山小屋を中心にご紹介します。

登山経験を重ねると、この絶景をもっと満喫したい!という気持ちが芽生えてくるもの。今年は、食事や空間づくりなど独自のサービスを展開する山小屋で、日帰り登山とはまた違った体験を楽しんでみては? 今回、人気コミックエッセイ『山登りはじめました』の著者であり、コロンビアとのコラボコレクションを監修する漫画家の鈴木ともこさんをお迎えし、初めての山中泊でもトライしやすい山小屋や、登山泊初心者の方にゆくゆくチャレンジしてほしい北アルプスにある憧れの山小屋を教えていただきました。

▲鈴木ともこさん

▲北アルプス・常念岳からの縦走路

山中泊・初心者におすすめの山小屋5選

「必ずしも山頂を目指さなくとも、途中にある山小屋をゴールにすることも山のひとつの楽しみ方だと思います」と山小屋泊の魅力を語る鈴木ともこさん。今回は、山中泊初心者にもおすすめしたい全国の個性豊かな山小屋を教えていただきました。

【山梨県】

雲取山 / 三条の湯

日本百名山・雲取山の中腹で鉱泉の湯に癒される 「東京都最高峰・雲取山の中腹にある歴史と風情を感じる山小屋で、その魅力はなんといっても水が豊富なこと。山では水が貴重で、ましてや人が利用できる水は本当に限られています。でもこちらは温泉もあり、水もお湯も無料で提供してくださるんです。地下から湧き出る硫黄泉を沸かした温泉で、肌がツルツルになります。疲れの取れ方が全然違いますし、登山者にとってはすごくありがたいですよね」
「温泉がある山小屋は他にもありますが、都心からのアクセスの良さも『三条の湯』をおすすめする大きなポイント。電車とバスを乗り継ぎ、日常の忙しさを忘れられる森の中をゆっくりと歩いて3時間ちょっとでたどり着きます。バイオトイレや水力発電といった環境に負荷をかけない取り組みがされていて、食事も土地の恵みをいただけます。電波の届かない場所で、山の中に身を浸し静かな時間を過ごしたい人にぴったりです」 【施設情報】 〒409-0300 山梨県北都留郡丹波山村 アクセス詳細はこちら

▼INFO/画像提供 有限会社丹波山観光 TEL:0428-88-0616

【長野県】

上高地 / 徳澤園

登山文化の中心地で、ちょっと特別な山小屋ステイ

▲山小屋から前穂高岳の景色を望む。

「上高地バスターミナルから2時間ほどの場所にある『徳澤園』。アップダウンの少ない道を進むと突然現れる広々とした芝生の景色の奥にある、山小屋とホテルの中間のような宿です。山小屋というと相部屋での雑魚寝というイメージに抵抗がある方もいると思うのですが、徳沢園はカプセルホテルのようにスペースが仕切られていて快適。和洋それぞれの個室、お風呂もあります。上高地は登山文化の中心地。観光客と登山者が交わる場所としてのいろんな方が訪れる中、時代や登山スタイルの変化に合わせてしなやかに進化していて、行くたびに驚きます」 「『徳澤園』は食事も充実しています。立ち寄りの方も多い『みちくさ食堂』では、名物のソフトクリームは外せません! 自家菜園の野沢菜を使った野沢菜チャーハンや窯焼ピザもおいしい。宿泊者限定の食事も品数が多く大変豪華。長い歴史がありながらも洗練されたおしゃれな空間と充実したサービスで、世代を越えて人を惹きつけます。歩かないとたどり着けない場所なので、山の静かな朝と夜も味わえますよ」 【施設情報】 〒390-1516 長野県松本市安曇上高地4468 TEL:0263-95-2508(7:00~18:00) アクセス詳細はこちら

▼INFO/画像提供 徳澤園 https://www.tokusawaen.com

八ヶ岳 / 双子池ヒュッテ

天然記念物が棲む美しい池を眺める、心穏やかな山時間 「『双子池ヒュッテ』は、私が公私ともに親しいオーナーご夫婦が運営している山小屋。最短コースだと登山口からわずか50分で到着します。「双子池」の名前のとおり、ふたつの池のほとりに建っているのですが、その水はサンショウウオが生息しているほど美しく澄んでいます。1日を通して移り変わる色や光、鏡のような水面を見ているだけでも心が穏やかになります」 「とにかくお客さんを大切に迎えてくれる小屋で、若女将の笑顔にもホッとするんです。食事では、手書きのウェルカムカードが添えられた心尽くしの料理がいただけます。フレンチシェフ経験もある小屋番さんが本場のレシピをもとに生地から手作りしているベルギーワッフルも人気です。コロナ禍でも安心して過ごせるようにと始まった相部屋での仕切りとしての“室内テント泊”もユニークな取り組み。小屋に来た人がどうすれば楽しめるのかを常に考えて、さまざまな工夫をされています。翌朝、天気が良ければぜひ近くにある双子山へ。45分ほど登ると中央アルプスや八ヶ岳を望む広々とした山頂に立つことができ、とても気持ちの良い景色に出会えますよ」 【施設情報】 〒391-0213 長野県茅野市豊平10222-30 TEL:090-4821-5200 営業期間:2023年4月29日(土祝)~11月11日(土)宿泊まで ※毎週木曜定休 他不定休有り アクセス詳細はこちら

▼INFO/画像提供 双子池ヒュッテ https://www.tateshina2531.com

八ヶ岳 / しらびそ小屋

絶品厚切りトーストと淹れたてコーヒーで始まる森の朝 「『しらびそ小屋』は、登山口から2時間ほど。シラビソの樹を眺めながら森の中をゆっくり歩いていくと小さな池のほとりに建っています。子どものころに読んだ絵本に登場する山小屋がそのまま現実になったかのような景色ですが、自然の厳しい環境の中で限られたものを工夫している姿はとってもリアルで、便利な街の生活の方がファンタジーだと感じられるほど。当たり前の豊かさに気づかされるような場所です」
「私が山登りを始めていちばん最初に憧れたのがこちらの山小屋。そのきっかけは、朝ごはん。リスや野鳥が遊びに来る窓辺を眺めながらご主人の作ってくれる朝食をいただくのですが、宿泊者だけが食べられる厚切りトーストが絶品なんです(要予約・数量限定)。外側はカリッと中はふわふわのパン手作りのジャムを塗って、丁寧に淹れた香りのいいコーヒーを味わう。この時間が本当に贅沢で、朝ごはんを目当てに訪れる方もたくさんいらっしゃいます。山では朝早く出発してまた別の場所を目指す方も多いですが、『しらびそ小屋』に泊まるときは、ぜひ時間を気にせず自然のリズムで、できるだけゆっくりと過ごすのもいいですよ」 【施設情報】 〒384-1301 長野県南佐久郡南牧村海尻400-3  ※山小屋施設周辺住所 TEL:090-4739-5255 定休日:月曜日・木曜日(※2023年4月より水曜日・木曜日) アクセス詳細はこちら 過去の特集記事はこちら

▼INFO/画像提供 しらびそ小屋 https://shirabisogoya.com

【大分県】

くじゅう連山 / 法華院温泉山荘

天然美肌温泉に浸かりながら壮大な九州の山を満喫 「『法華院温泉山荘』は、九州の一番高い場所にある山小屋。山に囲まれた場所にありながらも歩いて行きやすい立地で、初心者の方でも登山口から2時間ほどで到着できます。北アルプスはギザギザした岩場のイメージが強いですが、九州の山はアップダウンが少なく、なだらかなでとてもダイナミックなんです」 「『法華院温泉山荘』の魅力は、なんといっても温泉。お肌がツルツルになるお風呂から山がどんと見渡せます。朝風呂に入りたくて、自然に早起きできちゃうほど! 一年中営業している小屋なので、四季折々の楽しみ方があります。特におすすめなのは新緑の初夏と紅葉の秋、雪の季節には室内で盛り上がれる催しも。料理好きの女将さんのこだわりが詰まった地元の食材でつくる身体にやさしいお料理は、冷凍食品ゼロ。大分名物のとり天、おでんなど品数の豊富さにも感激します。山小屋の思い出として、小屋の方が手作りした手編みの帽子や刺繍バッジなど、ここにしかないオリジナルグッズが並ぶ売店もぜひ覗いてみてください。登山者を歓迎するあたたかな気持ちが感じられると思います」 【施設情報】 〒878-0202 大分県竹田市久住町大字有氏1773 TEL:090-4980-2810(受付時間 8:00〜20:30) アクセス詳細はこちら

▼INFO/画像提供 法華院温泉山荘 http://hokkein.co.jp