ギフトラッピング&送料無料(12/25迄)
ギフトラッピング&送料無料(12/25迄)
コロンビア、マウンテンハードウェア、ソレルのオンラインストアでは、12/6(金)から12/25(水)までギフトラッピングが無料でご利用いただけます。リサイクル糸を使用したギフト用エコバッグにてお届け!さらに期間中購入金額に関わらず、全品送料無料。
詳しくはコロンビアギフトガイドページで。
Chapter_1
エベレスト街道~
エベレストBC
2024年4月11日、近藤謙司氏とエベレスト公募登山隊がネパールの首都カトマンズ(1350m)に到着した。エベレスト登山には一般的に2つのルートがある。今回のネパール側からの南東稜ルートとチベット側からの北稜ルートだ。
近藤氏が代表を務めるアドベンチャーガイズ社による、今回の登山隊の遠征はカトマンズ入りから全行程50日間におよぶ。エベレスト登山はベースキャンプ(BC)から登頂~下山まで往復7日間の計画だ。つまりそれ以外の数十日間はBCに至るエベレスト街道と呼ばれる、山岳地帯を移動しながら行われる高所順応とトレッキング訓練に当てられる。
それでも他の一般的な登山隊と比べて、アドベンチャーガイズが設定する日程は短いと近藤氏は言う。高所での滞在があまりに長期間になると、逆に体力を消耗して良い結果を得られなかった例を数多く見てきたからだ。エベレスト登山がプロ登山家に限られた挑戦だった時代。その頃から日本の国際山岳ガイドとして8,000m級の高所登山を一般に広めた第一人者であり、数多くの登頂を成功させてきた近藤氏ならではの知見だ。
そんな近藤氏への隊員たちの信頼は厚い。そして近藤氏もまた、幾度か高所登山を共にし、それぞれに経験を積んできた今回の登山隊の面々の力量を高く評価し信頼していた。長期間におよぶエベレスト遠征は、チャレンジであり冒険であることは言うまでもないが、目標をひとつにした隊員や現地スタッフたちと苦楽をともにする凝縮された人生そのものでもある。そこでは人間としての生き抜く総合力、そしてチームの絆が試される。
登山隊は、まずカトマンズでプジャという安全祈願の儀式に参列した。祭壇には登山靴や道具を供え、僧侶による祈祷が行われる。危険を伴う聖なる地に降り立った厳粛な空気に隊員たちの身は引き締まった。翌日、空路でエベレスト街道の玄関口、ルクラ(2820m)へ。ルクラの空港は切り立った山間部にあり、滑走路がきわめて短い。そのため「世界一危険な空港」と言われている。このルクラから高所トレッキング訓練を10日ほど行いながら、エベレストベースキャンプ(5360m)を目指す。エベレスト街道という名の通り、ここからすでにエベレスト登山は始まっていると言ってもいい。
登山隊はルクラからパクディン(2610m)、そしてエベレスト街道で最も大きな村であるナムチェバザール(3440m)に入った。シェルパ族の聖山クンビラ(5761m)の山裾に広がり、ヒマラヤの案内人として、そして登山者を大切な仲間として命懸けでサポートしてくれるシェルパたちなど多くの人が暮らし、市場が開かれる交易の村としても栄えている。またナムチェバザールには登山の装備を揃えたコロンビアショップもある。
白銀を抱く鋭い峰々の圧倒的な景色を眼前にヒマラヤを訪れた実感を抱き、隊員たちは日々のトレーニングに励んだ。ナムチェバザール~クンデピーク(4238m)~クムジュン(3780m)~パンボチェ(3830m)~ディンボチェ(4343m)と進みながら、入念な予備山行で慎重に高所順応を行う。レスト日には隊員同士はもとより、滞在した村で現地の人々と交流も深め、近藤氏のもと登山隊の士気と結束は高まっていった。SNSによる現地からの報告も順調そのもの、隊員たちの元気な様子が伝えられていた。
しかしエベレスト街道に入っておよそ1週間、ディンボチェからロブチェBC(5000m)に着いたあたりで問題が発生する。隊員、スタッフたちに体調不良者が続出したのだ。喉の痛みや発熱といった症状から、現地でよく見られる流行感冒だと思われた。スタッフ数名が離脱するという不測の事態。しかし隊員の健康状態などを十分に検討した上で、高所順応を兼ねて標高6119mのロブチェピーク登頂を成功させた。ロブチェピークは登山開始直後に4700mの峠を越え、40度程度の斜面とナイフリッジも現れる。高所登山経験者にとってそれほど難易度が高くはないとはいえ、厳しい登山となったのは事実だ。
実は登山隊を率いる近藤氏も、この時に最も苦しんだ一人だった。しかし他の山岳ガイドのスタッフが同行しているものの、ここまで隊を率いてきた近藤氏が登らないとでもなれば、今後の士気にも関わる。近藤氏はその直後、一度ヘリで病院に向かっている。「ヒマラヤで8000m峰を21回登ってきましたが、病院に下山したのは初めての経験でした」。
ロブチェピーク山頂に立った彼らは8000m峰が迫り来る大パノラマの風景を一望した。もちろんそこにはエベレストも連なっている。その目にはいよいよこの後、自らその頂へ挑むことになる世界最高峰の荘厳で険しい輪郭が焼きついたことだろう。エベレストを目前にして波乱含みとなった遠征は、ロブチェからエベレスト街道最後の村、ゴラクシェップ(5164m)へと歩を進めた。その先に待つのがエベレストベースキャンプ(EBC)だ。