独自のアイデアでアウトドアウェアに
革命をもたらしてきたコロンビア。
これまで生み出してきたマスターピースたちから、その足跡を辿る。
独自のアイデアでアウトドアウェアに
革命をもたらしてきたコロンビア。
これまで生み出してきたマスターピースたちから、その足跡を辿る。
コロンビアを代表する名品といえば、マルチポケットフィッシングベスト。1960年に現会長のガート・ボイルが、夫と友人のために作った一着が製品化され、時を超えて多くの人々に愛されるロングセラーとなった。70年代後半に作られた本モデルを見ると、水に濡れないように短めに設定された着丈、胸元の複数のフラップポケット、下方に二重に配されたジップポケット、そしてロッドを固定するループといった特徴的なディテールが、すでに採用されていることがわかる。徹底してユーザー目線に立ち、アウトドアでリアルに機能するギアとしての服作りを続けてきたコロンビアの姿勢を深く理解できる逸品だ。
マウンテンパーカというウェアが初めて登場してから間もない70年代後半に作られた一着。大きなフラップポケットやフードといった、定番のディテールがすでに備わっている。その一方、身頃から袖にかけて縫製がなく、一体となった作りやゆったりとしたシルエットが初期モデルらしい素朴さを漂わせる。この当時からフロントはスナップボタンとダブルジップで閉める仕様となっており、胸元にはプリーツ付きのポケット、下方にはサイドから手を差し込める二重ポケットを備えるなど、機能性を追求する姿勢がうかがえる。その後アウトドアウェアの定番アイテムとして親しまれるマウンテンパーカの原型になっている。
80年代、コロンビアの躍進を支えたのが、1986年に発売されたバガブーパーカだ。アウトドアの基本的な着こなしであるレイヤリングを一着のウェアで実現するという発想から生まれたインターチェンジシステム。それを初めて採用したウェアであるバガブーパーカは、100万枚以上を売り上げる大ヒットとなった。ナイロン製のアウターとフリースのインナーは、ジッパーで簡単に着脱できるようになっており、それぞれ単体でも着用可能。別売りのダウン入りのインナーに付け替えることもできた。また、ポップなカラーリングや大胆な配色の切り替えは、街着としても映えたため、アウトドアウェアをタウンウェアとして取り入れる先駆けとなった。
すでにアウトドアウェアがファッションアイテムとして認められるようになっていた80年代後半から90年代にリリースされたのが、このフリース素材のプルオーバーだ。フリースといえば、いまや定番中の定番だが、コロンビアはそれをいち早く導入し、大ヒットを飛ばした。耐久性に優れ、雨にも強く、汚れても洗えるフリースは、誰もが待ち望んだ夢の素材だったに違いない。この一着はプルオーバータイプでポケットもないことから、インナーとして着用することが前提だったと思われる。また、当時を彷彿とさせるコンピュータのドット絵のようなカラフルで個性的な柄からは、ファッション性を強く意識していたことも読み取れる。
80年代に発売されたアノラックパーカ。一見するとシンプルなデザインだが、数々の機能性を備えている。まず、フロントには上下2段の大きなポケットを装備。下部は両サイドから開くジップポケット、上部は中にフリースを張ったハンドウォーマーポケットになっている。また、両脇の下にはジッパーをあしらっており、中の湿気を逃がすベンチレーションの機能を果たしている。さらにパッカブル仕様になっており、フロント下部のポケットに全体を詰め込んでコンパクトに持ち運ぶことが可能。携帯性が向上したことで、よりアクティブな行動が可能になった。また、緊急時のエマージェンシージャケットとしても重宝する。
コロンビアでは、80年代中頃から本格的なハンティングジャケットを作り続けており、スポーティングプロショップには必ず置かれているほど高い信頼性を獲得。このクアッドパーカも、ハンティングに特化した数々の機能的なディテールを備えている。コロンビアが開発したインターチェンジシステムを採用しており、ダウン入りのインナーを付け外しすることで状況に応じた着方が可能。また、フードも着脱できるようになっている。他にも、ポケットの中やインナーのダウンの胸元など、随所にブレットホルダーを備え、獲物の血がたまらないように考慮したメッシュポケットを配するなど、実践的な作りが際立っている。
8000メートル級の山にも登れる本格的な登山ウェアを作るべく、日本企画で開発されたダウンジャケット。国際山岳ガイドの近藤謙司氏とともに1年をかけて開発した。身体から出る熱を反射させて保温性を高めるコロンビア独自の機能「オムニヒート」を裏地に採用しており、ダウンの量を減らして動きやすくしつつも十分な保温性を確保している。また、酸素ボンベをセットするために襟元のフラップを長めにとったり、ハーネスを付けやすくするためにウエストのポケットを排するなど、登山に特化したディテールを採用。前述の近藤氏は、このウェアを着用して、5度のエベレスト登山に挑戦し、3度の登頂に成功している。
コロンビアのルーツは帽子問屋だったという事実を物語る名品が、このクラッシャーハットだ。ウール100%の生地で形作られたハットは、ツバが広く日差しを効果的に防げたうえ、リボンがあしらわれるなどファッション性も高く、男女を問わず多くの人々に愛用された。ヒットした理由は他にもある。柔らかいウール素材を使っているため、丸めてコンパクトに持ち運ぶことができる点、またウールならではの高い保温性があり、濡れても冷たくならない点などもアウトドアユースで重宝された所以だ。また、下の写真のように豊富なカラーバリエーションが用意されており、洋服とのコーディネートを楽しむこともできた。
コロンビアは、90年代に初めてラインナップにシューズを加えた。その中でもベストセラーとなったのが、このバガブーツーだった。防寒性を第一に開発されたこのモデルは、寒さが厳しい北米エリアに住む人々に諸手を挙げて迎え入れられた。アッパーにはレザーが用いられているが、ソールから続くラバー素材で甲部分を大きく覆うことで防水性を確保。また、シンサレート素材を多く内蔵することで寒気もしっかり遮断した。雪の上でも確かなグリップ力を発揮する独自のソール、オムニグリップも画期的だった。バガブーツーは、アップデートを繰り返しながら、現代まで多くの人々に愛用されている。
70年代、「ハイカスケード」と名付けられた新しいラインがコロンビアから登場した。パシフィックノースウエストを走るカスケード山脈にちなんで名付けられたこのラインは、バックパックを中心とした本格派のアウトドアギアを取り揃えていた。下のバックパックもそのひとつ。耐久性と軽量性に優れたナイロン製ボディ、頑丈なレザーを用いたボトムなど、現代まで続くバックパックの原型がすでに形作られていることがわかる。メイン収納はマチ幅が広く大容量。さらに、両サイドと中央にも収納スペースを備えるなど十分な機能性を有している。鮮やかなイエローは、おそらくアウトドアでの視認性を高めるためのものだろう。